不妊の中医学的考え方

2017年07月01日

ご相談が特に多い不妊症についてご紹介したいと思います。
私のご相談の経験上不妊症の中で一番早く妊娠するタイプは肝気鬱結タイプです。その次は気血両虚あるいはどちらかの虚、同じくらいで単なる瘀血あるいは冷え性。次は痰湿タイプ、未熟な卵胞がたくさんできる多嚢胞性卵巣症候群が特長です。
一番時間がかかるのは腎虚タイプです。
さらに混合タイプはさらに時間がかかります。
また体質改善には養生が必須です。
いかに柔軟に素直に取り組めるかが妊娠への近道かと思います。

不妊症でも一番結果が早く出やすい肝気鬱結タイプの不妊症からご紹介したいと思います。
子宮のことを女子包と呼びますが、この女子包が問題なく動けば妊娠・月経が順調です。女子包には十分な気血が必要で、肝・腎の影響を強く受けますので、肝気鬱結は妊娠・月経に影響を及ぼします。
肝気鬱結の原因は”ストレス”です。基礎体温の特徴は全体的に体温が一定とならずガタガタとしています。
基礎体温の基本は36.7度を境にし、生理が始まるときから数えて14日間が低温期36.3~36.5度、少し下がって、後半14日間が高温期36.8~37.0度が理想です。低温期・高温期に変わるときもダラダラ変わらずにすっと上がったり下がったりすることが望ましいですね。
肝気鬱結タイプは、不妊以外にも、たとえば吹き出物、便秘、頭痛、PMSなどの症状もあります。不妊治療に入ったとたん基礎体温をつけることや、妊娠判定日がプレッシャーになって肝気鬱結になるかたもいます。
不妊=温める と思いがちですが、このタイプは冷えのぼせが多いので、余計に熱がこもり逆効果になるので注意が必要。
しっかり気を巡らせて、リラックスし、主婦で仕事を持っていないのであればちょっとパートに出て気分を変える、運動をするなどの気を巡らせる養生が必要です。
経験上、「不妊」以外の諸症状、吹き出物や頭痛など、が治るころに妊娠もされるかたがほとんどです。

次に、不妊症で一番時間のかかる腎陽虚タイプをご紹介いたします。腎陽虚は生殖器をつかさどる腎が冷えている状態です。腎陽虚のかたの月経の特徴をあげてみます。
・低温期が長い3~4週間のため月経周期が長い。→高温期になるための陽が足りない。
・低温期が2週間あっても高温期が10日もたない。→高温期を保つ陽が足りないため。
・高温期になれず無月経
・平均体温が低い(低温期が35度台)
・冬になるにつれて上記の症状が顕著になる
・生理痛はとくに腰痛
腎陽虚でなくても腎虚であれば、次の症状も
・月経前後にだらだら出血が続く(厳密には腎気不固といいます)
・低温期から高温期にあがるときに時間がかかる
また腎陽虚が十分改善しないまま妊娠した場合、赤ちゃんを支えきれず切迫流産や早産の危険もあります。母体の体力もかなり消耗します。
すべての項目があてはまるわけではなく、いずれかの場合や何個かあてはまるかたも。
腎陽虚の場合は補腎陽がもちろんポイントなのですが、普段の養生も欠かせません。腎虚は生まれつきのものが多いですが、大人になってからの過労により腎虚になるかたも多いです。もちろん年齢とともに腎虚になります。
生活習慣を聞き、過労であれば休むようにする。夜にたくさん寝る。早寝が必須!
運動を過剰にしているのなら、控えてもらう。
30代後半から妊娠しようと思うのであれば、とくに養生は必須です。
漢方相談で40歳近い不妊のご相談のかたには、私は結構厳しめに指導しています。そして腎陽虚タイプは冬場は完全に養生に費やしてください。冬は腎を温存する季節。無駄なエネルギー消費を控え、しっかり休んで栄養を取り、暖かくして過ごす。そしてうまく行けば春に草花の芽が出るように妊娠もしやすくなります。


不妊症で意外と知られていないタイプが「痰湿」です。
多嚢胞性卵巣症候群という病名を聞いたことはないでしょうか?
これは未熟な卵胞がたくさんできてしまい、卵胞が成熟せず排卵しない状態で、月経が遅れることが多いです。
この多嚢胞性卵巣症候群のかたのほとんどが痰湿タイプなのです。
その関連性ははっきりとはわからないのですが、結果からいうと痰湿なのです。
痰湿になった原因は甘いもの・脂っこいものを食べ過ぎたり、脾が弱って運化機能が弱ることです。
症状は以下のとおりです。
・頭痛・めまいが多い(とくに雨のとき)
・吐き気を起こしやすい(あるいは嘔吐する)
・粘ったおりものが多い
・ふきでものが出やすい(とくに口の周り)
・生理前の生理痛(痰湿により血の巡りが悪くなり痛みを生じやすい)
・基礎体温は高温期になるのに時間がかかる(排卵しにくい、あるいはしないため)
・舌苔はべったり(白あるいは薄黄色)
・痰がからみやすい
痰湿タイプは肝気鬱結に似た症状が多いので、間違わないように注意が必要です。
痰湿はからだの気血水の巡りを阻む原因にもなりますので、スムーズな流れは妊娠のためには必要なことなのだと思います。

不妊症=〇〇が良い、というセオリーはなく、人によって体質が異なるため対処法もおのずと変わってきます。ご相談の上、適切な漢方薬と養生法のアドバイスをご提供させて頂きます。 

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